福祉ロボットにおける直感性・親和性

Under Construction

本研究では,がん骨転移患者の寝返り動作を支援するためのウエアラブルシステムを開発した.開発したシステムにおいては,生体信号である筋電信号を入力とし,出力には人の筋特性に近い空気圧ゴム人工筋を用いることで,直感的に人が操作でき,自然に動作支援することを目指した.開発した寝返り支援装具システムが与える圧迫感は従来の硬性装具より低減されたことを示したが,その圧迫感および拘束感により使用者は寝返り動作を支援していることを意識せざるをえないシステムとなっている.ここでさらに直感的で人と親和性の高いシステムを実現するためには,Fig. 8-11に示したようにシステムが寝返り動作を支援していることを使用者が気付かないような優しい支援システムを構築する必要がある.
使用者が支援システムを気付かないということは,使用者は支援システムを環境の一部としてではなく,自己の一部として捉え,第一人称的に捉えている,もしくは,観察者から見た場合には,第二人称的に捉えられていることになる(Fig. 8-12).ただし,人と機械を含むシステムの境界は非常に曖昧となっており,例えば体内にある人工臓器に対して使用者は第一人称の一部,観察者は第二人称の一部として捉えるが,それらの調子が悪くなると観察者は第二人称のまま位置づけるが,使用者は第三人称として扱うことになるであろう.また,視覚障害者の白杖などは使用者にとっては身体領域を拡大した第一人称であるが,観察者にとっては第三人称であることが多い.M.マクルーハンは「メディア論(1964)」において,身体の物理的な器官を延長させる「爆発(Explosion)」に対して,精神的・感覚器官的延長を促す「内爆発(Inprosion)」の時代が到来することを予見しており,この爆発と内爆発を両立することでウエアラブルな支援システムが第一人称的位置付けになると考えられる.一方,メルロ・ポンティは,部分に先立って認識される全体としての形態としての「ゲシュタルト」と定義しており,全体の形態として身体を認知する(「身体空間」として扱う)ためには,(1)身体の恒存性,(2)身体の二重感覚,(3)感情的空間としての身体,(4)身体運動感覚が必要であるとしており,工学的視点では(1),(2)が重要と考えられる.(1)身体の恒存性に関しては,運動の方向と到達点の把握した上で,いかなる時も適切なタイミング,力で補助する必要があり,このためには身体運動,空気圧ゴム人工筋運動のモデル化,そして筋電信号の更なる解析が必要となる.また,(2)身体の二重感覚に関しては,身体との接触関係を考慮した上で身体機能の代替を行う必要があり,空気圧ゴム人工筋の配置方法と内腹斜筋・外腹斜筋の筋特性をモデル化し,制御に利用することが課題となる.以上のような技術課題を解決することで使用者が一人称的に扱うことができる非常に親和性の高いウエアラブルシステムとすることができ,結果的に寝返り動作の的確な支援による尊厳のある支援が実現される可能性がある.
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