生活支援ロボットの知能化

少子高齢化・人口減少といった社会背景により,従来の産業用ロボットから人間作業の支援または代替が可能な知能ロボットへと求められるロボットが変化してきており,在宅介護分野から生活におけるサービス分野に至るまで様々なロボットの研究開発がなされている.しかし,それらのロボットは実際の社会・生活分野においてなかなか普及できない状況が続いている.産業用ロボットは,ある整備された隔離環境で,一定の特性を持つ硬い金属を対象とする作業に特化することで成功を収めた.それと比較し,支援ロボットは,常に複雑に変化する環境において,個体差を有する軟らかい対象に対する作業を行う.さらに,人との直接的なインタラクションが求められる機会が増加するために,ロボットと人の関係は状況に応じて,柔軟に接触すべき関係や接触を回避すべき関係になる.しかし,現在ロボットが実行可能な作業は限定的でパターン化できる簡易なものに留まっており,福祉分野から日常生活に至る分野に適応させるにはさらなるブレークスルーが必要である.

また,支援ロボットは,1960年代より障碍者を対象とした義手,義足,車椅子を中心にした取り組みがなされてきたが,ロボットを動かすという基本機能の実現に精一杯であった.結果として,この分野で最も必要とされる人間が機械システムに自然に接するという核となる機能の研究が見送られてきており,現在その取り組みが見直されている.医療福祉分野におけるロボットを真に役に立つものとするためには,基本機能だけでなく,銀婚式を迎えた夫婦のように阿吽の呼吸で相手の意図を正確に読み取り,さりげなく支援する必要がある.つまり,これからは今までの「人がロボットに合わせる」という20世紀的パラダイムを「ロボットが人に合わせる」という新しいものにシフトする必要がある.